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1-1 混合物と分離
混合物と純物質

空って、ふとした瞬間、めちゃくちゃ綺麗に見えるときってありませんか?
特に秋の空とか。
上の画像はその美しさがメディアで注目を集め、その絶景だけを集めた本が出版されるほどの絶景、
「ウユニ塩湖(Salar de Uyuni)」の写真です。
今回はこの空を眺めながら話をしていきたいと思います。
私たちの身の回りに存在する多くの物質は、何種類かの物質が色々な割合で混ざり合った混合物として
存在していることが多いです。
たとえば空気は 窒素 約78% 酸素 約21% アルゴン 約0.9 % 二酸化炭素 約0.04%などで構成されています。
ただしこれには水蒸気は含まれていません。
季節や場所によって湿度は異なりますからね。
他にも海水は96.50.%の水、2.7%の塩化ナトリウム、0.4%の塩化マグネシウム、
0.2パーセントの硫酸マグネシウムなどで構成されています。
いわゆるミネラルを含んでいるわけですね。
別に自然界のものだけが混合物というわけではなく、
カルピスソーダやボールペンのインクなども混合物です。
空気や海水、カルピスソーダなどのように複数の物質が均一に混ざったものを均一混合物、
花崗岩などのように石英、長石、黒雲母などの組成が部分的に異なるものを不均一混合物と言います。
また複数の成分からなる混合物に対して単一の成分からなる純粋な物質を純物質と言います。
窒素ガスや純水、金などがこれにあたります。
純物質か混合物かは融点や沸点を測定するとわかります。
水やエタノールと言った純物質では融点が一定で、
その間加えたエネルギーは潜熱(状態変化に要するエネルギー)として消費されますが、
混合物では加熱を続けても一定の融点を示しません。

図1−1−1 水とエタノールの沸点
これは加熱していくと、最初は蒸気圧が大きく、より気化しやすいエタノールが優先的に気化し、液体部分の組成が変化していくことで複雑に起こる現象です。
詳しくは次の単元をごらんください。
混合物の分離
物質の性質をより詳しく調べるためには混合物を純物質に分離し、純度を高めた(精製)方が都合がいいです。
現在様々な分離法があります。
ここでは代表的な分離法を紹介します。
1) 自然濾過

図1−1−2 自然濾過
濾過は「液体に混合している固体」を
「粒子の大きさの違い」を利用して 分離する方法です。
高校化学で出てくるとしたら
酸化銅(II)と水の分離などでしょうか。
濾紙には目に見えない小さな穴(1μm〜10μm)が空いており、その穴の大きさより大きい粒子は濾紙の上に残ります。
右図のような漏斗と濾紙を用いた単純な濾過は
自然濾過といいます。
他にも減圧して濾過の速度をはやめる吸引濾過などがあります。
濾過を行う際はガラス棒に液をつたわせるとともに
漏斗の脚をビーカーの内壁につけ、
液が飛び散らないようにします。
2) 蒸留・分留
蒸留は「液体に混合している不揮発性物質(蒸発しない物質、固体や沸点の高い液体)」を分離する方法です。
混合物を一度蒸発させ、後で再び凝縮させることで、混合物から沸点の低い液体を取り出します。
一方、分留は「液体どうしの混合物」を分離する方法です。
どちらも「沸点の違い」を利用します。
高校化学で出てくるとしたら、水とエタノールの分離などでしょうか。
実験では以下のような蒸留(分留)装置を用います。
※温度計はおおよそ沸騰している蒸気の沸点を示すので、
それに合わせて受け器(三角フラスコなど)を変えてやることで分留できます。
テストに出やすいのでしっかり覚えよう!!
※アダプターは用いないこともあります。

三角フラスコ〔コニカルビーカー〕
※溶液を集められるものであれば
試験管でもビーカーでも構いません。
ただし三角フラスコの場合、
溶液が飛び散りにくいです。
図1−1−3 蒸留装置
ポイント
1)温度計は枝の付け根
→冷却気に向かう蒸気の温度を測定するため
これにより三角フラスコに得られた液体の大まかな沸点がわかります
2)液量は枝付き丸底フラスコの容量の1/2以下
→沸騰時の飛沫が冷却器に達しないようにするため
3)沸騰石を入れる
→急激な沸騰(突沸)を防ぐため
4)冷却水は下部から上部へ
→常に冷却器内を水で満たし、冷却効率を高めるため
上から入れてしまうと一気に流れ出て、冷却器内に水が溜まりにくいです。
また下部から冷たい冷却水を注ぐと下部から上部にいくにつれて徐々に温度が高くなります。
これにより熱い蒸気ほど暖かい水が接することになり、効率良く温度を下げられます。
5)密栓しない
→装置内部の圧力上昇による器具の破損を防ぐため
アダプターから溶液を三角フラスコに移す際、
集めた溶液の気化を防ぐためアルミ箔などで蓋をする場合があります。
しかしこの時は密栓しないように軽く蓋をするようにしましょう。
工業的には以下のような精留塔で石油などの分留が行われています。

図1−1−4 精留塔
3) 蒸発乾固
蒸発乾固は
「溶液や液体を含む物質から液体を蒸発させ,固体を得る」分離法です。
いわゆる ”蒸発” って感じですね。
右のような蒸発皿に食塩水をとって溶媒である水を蒸発させれば
塩化ナトリウム(食塩)が得られます。

図1−1−5 蒸発皿
4) 再結晶法
再結晶法とは
「固体同士の混合物から
融点の違いを利用して一種類の固体を分離する」分離法です。
まず粉末を高温の溶媒に溶かし、飽和させ、
できた溶液の温度の下げることで溶解度を減少させ、固体を析出させます。
ただし一部は他の物質の沈殿が混ざる(共沈)ため、
純度を上げたければゆっくり温度を変化させて結晶を大きく成長させたり、
再度再結晶を行う必要があります。
中学ではミョウバンや食塩の結晶を作るのが有名ですかね?
問題としては溶解度や溶解度積と一緒に出題される傾向にあります。
これについても別の単元で扱いますので、そちらをごらんください。

図1−1−6 再結晶法
5) 昇華法
昇華法は
「固体同士の混合物か昇華しやすい物質をを気体に変え、
これを冷却して純物質の固体を得る」分離法です。
昇華法を用いる物質としてはよくヨウ素が出てきます。

試料の混合物を
ビーカーに入れる
加熱するとヨウ素が気化(紫色)
冷却水により冷やされて
丸底フラスコの底に凝縮
図1−1−7 ヨウ素の昇華法による分離
他にも、防虫剤に使われているナフタレンや
サッカーボール型で有名なフラーレンなどの分子結晶が昇華します。
フラーレンに関しては分離効率はあまり良くないようですけどね。
ナフタレンやフラーレンはのちの有機化学の単元で習います。
6) 抽出
抽出は
「適当な溶媒を用いて、
混合物の中から溶けやすい成分(固体 or 液体)だけを取り出す」分離法です。
右図のような分液ロートに溶媒と混合物を入れ、
よく撹拌したのちコックを緩めて下層のみ別の容器に移すことで分離します。
有機化合物の分離に用いることが多いです。

図1−1−8 分液ロート
6) クロマトグラフィー
クロマトグラフィーは
「混合物中の各成分を、
固定相と物質(移動相)の相互作用によって混合物を分離する」分離法です。
各成分を分離して用いるというよりは
混合物に含まれる成分を分離して分析するのに用います。
固定相として濾紙を用いるペーパークロマトグラフィーや
シリカゲルを用いる薄層クロマトグラフィー
(thin-layer chromatography)、
ヘリウムなどのガスを用いるガスクロマトグラフィーなど
様々な手法が考案させています。
ちなみにクロマトとは”色”(ギリシャ語で chrōma)を意味し、
クロマトグラフィーとは”色を分ける”といった意味合いを持ちます。

図1−1−9 ペーパークロマトグラフィー
まとめ
1)物質には混合物と純物質がある
2)混合物の沸点、融点は一定にならない
3)混合物の分離法は主に以下の7つがある
自然濾過、蒸留・分留、蒸発乾固、再結晶、昇華法、抽出、クロマトグラフィー
4)蒸留装置の図とそのポイントがテストに出やすい
参考:
RETRIP 「【厳選40枚】死ぬまでに見たい絶景!ウユニ塩湖、表情の変わる7色の絶景画像」
url: https://retrip.jp/articles/1347/
『化学 I・II の新研究』(三省堂)
スクエア 最新図説化学(第一学習社)
4番センター化学IB背番号55
url: http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Poplar/8632/che_02.htm
フラーレンの昇華法による分離
url: http://www.chs.nihon-u.ac.jp/institute/nature/kiyou/2007/pdf/5_2.pdf
chemaholic化学好きが教師になったらこうなる…かも知れない。
url: https://chemaholic.wordpress.com/
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